chatwork企業分析その2
業界:業界規模0.6兆円△ 伸び率8.8%〇 利益率15.4%〇(2019)
ソフトウェア業界のSaaSに分類する
業界概要として、SaaSは「software as a service」の略であり、これまでパッケージソフトとして提供していたサービスをクラウドサービスで提供する。この分野は年平均約15%成長率を誇っており2021年には2016年の約2倍にあたる約5800億円へ拡大予定。海外市場も成長しており、日本から海外へサービスを提供している会社も存在する。SaaSの中でも2つに分かれている。Horizontal SaaS と Vertical SaaSである。特に前者の方は、カレンダーやチャット、ワークフロー、文書管理などの機能を提供し特定の分野に特化している。また、メールの配信、顧客の管理などにも導入が進んでおりMOと呼ばれている。トレンドとして、サブスクリプションモデルやSaaS企業のプラットフォーム化である。
サブスクリプションモデルとは利用量や利用期間によって利用金額が発生し利用するには課金する必要がある。今までは使い切りモデルであり、導入ハードルが高かったが、これによって低くなり、ITを利用しやすくなった。また、一度良ければずっと使ってもらえるため技術力・信頼度などが重要となってくる。次に、SaaS企業のプラットフォーム化である。これは、4つの種類がある。主なものとして、PaaS化である。これは開発機能を持ったクラウドサービスを提供することである。そこに、多くのSaaS会社が参入することで顧客は自分に合ったSaaSを用いることができる。次に、特化型である。専門的なSaaSとしてカテゴリーキング化したものが他企業によってさらに専門的なサービスを提供することで幅が広がることである。
業務内容は営業・開発・保守の3つに大きく分けることができる。
・営業は自社製品を販売する通常の営業と顧客から引き合いでシステム開発を請け負い、受注するものである。顧客のニーズ・要望を把握する必要がある受託開発営業がある。また客先へSEを派遣し受注するものである
・開発ではソフトウェアの要件定義から設計までシステムエンジニアが行い、プログラマーが開発・テスト・納品を行う。
・保守ではシステムのバグや顧客の要望に従ってSEとシステムエンジニア協力して顧客の要望に応えるものである
将来的な展望として、ユーザー自身がSaaSを連携させることで付加価値を見出すことができるようになる。しかし、現段階ではベンダー同士が協力してエコシステムを構築し付加価値を向上させている。これは、1社だけでは新たなサービスを生み出すことができにくくなっているからである。これを行うためにAPI連携が重要となっている。APIをオープンにすることで他社がしようすることができ、価値を最大化できる。またiotにとの連携も進んでおり、SaaSとのエコシステム構築が進むだろう
課題は導入段階までは良いがそこから定着するかどうかであることとセキュリティである。ユーザーへの定着は企業内のシステムと合わなかったり、人によって使いずらさを感じる部分もあるからである。これを克服するためにセミナーや導入前ヒアリングを徹底すべきであるが、これに人件費が多くかかるため中小・零細企業の場合難しい部分もある。次に、セキュリティである。システムのアップデートはベンダー側が行ってくれるため良いが、外部からの攻撃を受けた場合の補償やそれに対する金額が別途かかることが一つの障壁となっている場合がある。また、社内情報の悪用なども行われる可能性がある。これにたいして、SaaSのプラットフォーム化を行い、セキュリティサービスなどとともにユーザー企業に選んでもらう必要がある。
業績:まず貸借対照表から分析する
貸借対照表指標 |
19・3 |
73% |
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337% |
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316% |
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固定比率 |
14% |
固定長期適合比率 |
14% |
自己資本比率は73%である。昨年より増加。2019年9月の資金調達により資本が増加したためである。また、繰越利益剰余金がマイナスである。これは、赤字が続いていたため資本金を使っていたことが要因である。しかし、黒転したため今後減っていくと見れる。
流動比率は337%である。昨年より増加している。これは資金調達による現金の増加と売掛金の増加が主な要因である。資金調達により事業拡大それによって売掛金の増加という流れができており好循環である。
当座比率は316%である。昨年より増加している。しかし、流動負債が増加している。これは、前受金の増加と法人税・消費税の増加が主な要因である。前受金はシステム受注の増加を表しており、法人税・消費税の増加は昨年の未払い分が繰り越して今期に来ていると考えている。
固定比率は14%である。昨年より低下している。しかし、新しい建物を建てており、固定資産は増加している。土地、敷金保証金、破産更生債権が増加、計上されている。事業拡大と投資先の破産危機であることが分かる。
固定資産長期適合比率は14%である。昨年より低下している。この会社は固定負債がないため、ほとんどの資産を自己資本で賄っており、黒転すれば強くなっていくと考えられる。
次に、損益計算書を分析する
損益計算書指標 |
19・3 |
売上高総利益率 |
62% |
42% |
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34% |
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30% |
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41% |
売上高総利益率は62%である。昨年より増加している。売り上げの増加が主な要因である。これは、営業活動の増加とウェブマーケティングの強化が主な要因である。売上原価は大きく増加しておらず、単純に受注が増加したことを意味している。
売上高営業利益率は42%である。昨年より増加している。しかし、販管費も増加しており、営業活動増加に伴う人件費の高騰が主な要因であると考える。この部分をもっと減らしていければ変わると考える。
売上高経常利益率じゃ34%である。昨年より増加している。しかし、営業外費用の増加目立つ。新株発行や上場関連費用によるものなので、一時的なものである。また為替差損も発生しており、米中の動き次第ではネックとなる可能性もある。
ROAは30%である。昨年より増加している。資産自体も増加しROA低下の可能性もあったが、黒転したため上昇している。また税金は、昨年の控除された分が請求される可能性があるため見張っておく必要がる。
ROEは41%である。昨年より増加している。しかし、利益剰余金大きくマイナスとなっており、資本金を食いつぶしている。これを貯めていくようにしてもらいたい
次にCF計算書を分析する
CF計算書(19・3) |
百万円 |
営業CF |
98,648 |
投資CF |
-49,053 |
財務CF |
870,885 |
営業CFは98,648である。昨年より増加している。これは、当期純利益が増加したことによるものである。また、売上債権は増加しているものの昨年より減少している。つまり、来期の売り上げが減少する可能性も考えられる。未払費用は昨年より減少している。これは、新規の建物、受注増によるものである。貸倒引当金も増加している。これは不良債権化を防ぐためのものである。棚卸資産が増加しているが少額である。これは、在庫回転率が良いということである。
投資CFは―49,053である。昨年よりマイナス幅が増加している。有形固定資産支出の増加と差入保証金の増加である。有形固定資産と差入保証金は新規の建物を作ったためである。
財務CFは870,885である。これは、株式の発行によるものである。譲度制限付き株式報酬としての新株発行によるものである。目的として取締役と株主との価値共有である。また、敵対的TOB防止や株主総会の円滑化を行うためだろう。