キリン企業分析その2
<企業分析>
業界:業界規模3.2兆円 △ 伸び率―3.2%△ 利益率5.7%〇
業界は、ビール業界とする。
業界動向は、ビールの販売量が年々減少or横ばいのため市場規模は縮小している。2018年度のビール課税数量は前年比―5.8%減少の244万8千キロである。こちらも、減少傾向にある。近年では、ハイボールやチューハイ、ストロング系が人気であり、ビール自体の買い控えが進んでいる。特に、家庭用では発泡酒、新ジャンルなどの低価格帯好まれる。業務用では、ハイボールやサワーが人気である。また、数年前まで、人気だったノンアルコールの伸び率が鈍化しており、トレンドの入れ替わりが激しいことが分かる。
・ビール課税数量…生産工場から出荷して課税された時点の数量
業務内容としては、特徴的なものが開発・研究、製造、営業・販売促進の3つである。開発・研究では、顧客のニーズの発掘をし、何を求めているかを理解する必要がある。そして、商品のコンセプトを決定し、どの層にどれくらいの価格で届けるのか考える。最後に、パッケージデザインを考える。この一連の流れを考える。製造では、工場で、ビール醸造工程の生産ラインの管理、技術問題の解決、新設備導入の計画・立案、省エネ対策を行い、清算の効率化、業務効率化等を重点的に行う。また、近年では、人員削減のため、IoTを用いた、FAを導入するようになっている。この流れは今後加速するだろう。営業・販売促進はスーパー、量販店、飲食店、ゴルフ場を中心に営業や売り場提案、商談を行う。
課題は日本のビール市場の規模の縮小である。これは、少子高齢化と若者のビール離れが主な要因である。少子高齢化において、高齢者の増加は酒を飲む人口の減少、かつ少子化は将来的な労働人口の減少を意味している。また、若者のビール離れも加速し、外部環境の悪化が著しい。次に酒税法の改正である。2026年までに3段階で酒税法が改正される予定である。酒税一本化である。2017年から過度な安売りが規制されている。そのため、安さが売りの商品が値上がりした。2018年からはビールの定義が広がり、新たな商品開発に着手した。そして2020年10月から、ビールに減税、新ジャンルのビールに増税、ワインは増税する予定。これに対して、どのように戦略を取るのか注目される。
将来性を考える。近年、コロナの影響もあり、宅飲みが増加している。そのため、RTD市場の規模拡大が考えられている。これに、各社が大きく参入する可能性もある。また、酒税一本化により、ビールの値下げ=売り上げの低下が起こるため、他事業の拡大や、海外への進出に力を入れるだろう。事業ではヘルスケア、海外展開では東南アジアが有望視されている。
業績:貸借対照表分析を行う。
貸借対照表指標 |
19/12 |
37% |
|
110% |
|
76% |
|
固定比率 |
126% |
固定長期適合比率 |
111% |
自己資本比率は37%である。昨年より低下している。自己資本は大きく変わらない。しかし、総資本の増加のため、低下している。自己資本は、利益剰余金を投資、自社株買いに回し、増加幅小さい、また、投資=子会社取得により資本剰余金が増加している。自社株買いは昨年より増加している。
流動比率は110%である。昨年より低下している。流動資産の低下と流動負債の増加である。流動資産は売上債権とその他流動資産が減少している。売上債権は恐らく、ライオン社の不振が主な要因だろう。他者との競争が強かったためである。
当座比率は76%である。これは昨年より減少している。流動負債の増加が主な要因である。まず、借入金の増加である。ファンケル取得と海外会社の取得のため一時的に増えたのではないだろうか?また債務も増加。これは、事業全体での変動費及び物流費の高騰のため債務が増加。これは一時続くのでは?
固定比率は126%である。昨年よりぞうかしている。主な要因は固定資産の増加である。突出して増加した勘定はない。しかし、ほとんどの勘定が増加している。これは、子会社取得によるものではないか?経営資源の増加ととれる。
固定長期適合比率は111%である。これは、昨年より増加している。しかし、固定負債は大きく変わらない。借入金は減少している。しかし、その他金融負債=支払利息が増加している。短期借入金が増加したためだろうか?
次に、損益計算書分析を行う。
損益計算書指標 |
19・12 |
売上高総利益率 |
43% |
売上高事業利益率 |
9% |
4% |
|
3% |
|
8% |
売上高総利益率は43%である。昨年より増加している。これは、売り上げの増加と、売り上げ原価の減少が主な要因。事業では、オセアニア総合飲料事業以外では事業利益は増加している。変動費の増加に対して、固定費を抑えたことに対しての効果だろう。
売上高事業利益率が9%である。昨年より大きく変わらない。しかし、販促費は増加している。おもに、ビール事業、飲料事業のbrand向上のため広告費が原因だろう。今後もこの傾向が続くと予想。
売上高営業利益率は4%である。昨年より減少。その他営業費用が増加している。これは、マーケティング費用や物流の強化のための費用であると考えられる。
ROAは3%である。これは、昨年より減少している。利益の減少が主な要因である。また金融収益が減少している。これは、有価証券評価損が主な要因だろう。また、株式取得会社の株価の低下。
ROEは8%である。ROEは昨年より低下。資産回転率でみると、非流動資産の回転率が非常に悪い。工場、研究施設等の設備が主な要因だろう。市場規模低下しているため、新事業着手のため、工場を減らすor転換した方が良いのでは?
CF計算書(19・12) |
|
営業CF |
178,826 |
投資CF |
-175,619 |
財務CF |
-9,997 |
営業CFは178,826である。これは、昨年より減少している。当期純利益が減少しているのが主な要因である。しかし、固定資産売却益が減少しており、マイナス幅が縮小している。特に、事業売却の分だろうと考えられる。また、投資利益のマイナス幅が減少。これは、ファンケル買収によって一時的に増加したもの。そして、営業債権、債務、棚卸資産を見ていく。営業債権はやや増加している。飲料・アルコール・医薬品の売り上げ増加が主な要因。営業債務は減少している。物流強化と固定費の抑制がこれを生み出したのか?棚卸資産は昨年より増加している。医薬品の新商品の売り出しのため増加したのか?
投資CFは―175,619である。昨年より大きく減少。主な要因は会社取得によるもの。上述したようにファンケルの株氏を取得し完全子会社化したためである。また固定資産の売却益が減少しているのも要因である。
財務CFはー9,997である。昨年よりマイナス幅が減少。これは、CPの増加と社債発行が主な要因。特に、子会社の取得や研究開発費のために増加したのだろうと考えられる。返済もちょっとずつ進んでいる印象